お知らせ 2023年10月31日

 

私儀、このたび20245月をもちまして京都大学を退職することとなりました。つきましては、大学の取り決め通り医生物学研究所附属感染症モデル研究センター ウイルス共進化分野 宮沢研究室は、私の退職に伴い閉鎖となりますことを皆様にご報告申し上げます。

 

【これまでの経緯について】

私が東京大学に奉職したのは1996年、31歳のときでした。以来、来年5月に60歳となりますが、一度も途切れることなく国立大学(のちに国立大学法人)を異動してきました(1996年から東京大学、2001年から大阪大学、2003年から帯広畜産大学、2005年から京都大学)。京都大学では、初め、ウイルス研究所(1956年設立)に新設された新興ウイルス感染症研究センターの助教授(正確には特別教育研究助教授)に着任いたしました。2009年にはウイルス研究所に空きポストができ、公募に応募して独立准教授のポジションを得ることができました。教授枠がない研究室で(教授に上がることはできない)、助教や講師はとれないポジションでしたが、独立して研究を続けられるというものでした。その後、ウイルス研究所は201610月にウイルス研究所と再生医科学研究所が統合されウイルス・再生医科学研究所となり、20224月に現在の医生物学研究所(Institute for Life and Medical Sciences)に改称されました。研究所の名称からウイルスが消されたことは甚だ残念なことでした。

 

【今後について】

研究室を閉鎖するにあたっての作業(サンプルの整理、事務処理、機械や試薬の処分など)が膨大であるため、来年5月までこれらの作業に専念することになります。それ以降についての身の振り方はまったくの白紙で、再就職、あるいは完全引退ということにもなるかもしれません。当面は現研究室に関わる作業に集中したく、皆様からのご意見、ご依頼等への返信が滞り、多大なご迷惑をお掛けしてしまう状況を懸念しております。現状、講演、執筆等の新規の依頼は受け付けておりません。どうかご理解いただけますようお願い申し上げます。

 

【最後に】

研究所にはミッションがあり、職員はその研究に専念することが求められます。それに合致しないことは評価しないという大学と私ではスタンスの違いが大きいということは十分にわかります。しかしながら、国難に当たっては、正しい情報を国民に発信することは大学教員、研究者としての責務であると私は考えています。自分の研究を大事にしつつも、そこから逃げずに対処するというのが私の行動原則でありました。 この考えに至った経緯は、これまでに拙書『ウイルス学者の責任』(PHP新書)などでも述べてきた通りです。しかしながら、コロナ禍においても私の本業での業績は十分であったにもかかわらず、大学からは最後まで理解を得ることはかないませんでした。まだ研究を続けたいというのが私の本意ですが、心血を注いで築き上げてきた研究に必要な環境、研究室を来春で閉鎖する事態に至りました。

エールを賜る皆様におかれましては、状況をご理解いただきたく、京都大学宛てに私の動向に関してのメールや電話などで事務業務を煩わせることは厳にお控えくださるようお願い申し上げます。

また、これまでもネットなどに溢れている私に関する憶測や偽情報にはご注意いただきますようお願い申し上げます。    

PHP新書のウイルス三部作

2023年3月25日 PHP研究所から新書『なぜ私たちは存在するのかーウイルスがつなぐ生物の世界』を発刊しました。

2022年3月25日 PHP研究所から新書『ウイルス学者の責任』を発刊しました。

2021年4月16日 PHP研究所から新書『京大おどろきのウイルス学講義』を発刊しました。

At homeのこだわりアカデミー(2016年6月号)に下出らの研究が紹介されました。

宮沢が京都大学のHP(探検!京都大学)の「京大先生図鑑」に紹介されました。

古代のレトロウイルスであるBERV-K1は、約2000万年前にウシ亜科動物の祖先の生殖細胞に感染し、ゲノム(FAT2遺伝子のIntron)に組み込まれました。そして、現在は、Fematrin-1としてウシ亜科動物の胎盤で機能しています。このように、古代ウイルスは、ほ乳類の進化に寄与しています。(お知らせ

JT生命誌ジャーナルにFematrin-1と胎盤の進化に関する研究が紹介されました。是非ご覧下さい

Nature Japanにウシ内在性レトロウイルスに関する研究が紹介されました。こちらも是非ご覧下さい。

 ニホンザル血小板減少症の原因ウイルスであるサルレトロウイルス4型の感染性分子クローンの作出に成功し、ニホンザル血小板減少症がSRV-4単独で引き起こされる疾病であることを証明しました。さらにSRV-4のウイルス受容体を同定し、様々な組織で受容体が発現していること、様々な組織にウイルスが感染していることなどを見いだし、Journal of Virology誌4月号に公表しました。詳しい内容については、京都大学のHPの研究成果をご覧下さい。

 SAC誌第177号(2015年1月号)に「ネコモルビリウイルスに関するQ&A」が公開されました。

 獣医師向けに平易に解説しています。

 

 ネコモルビリウイルスは腎臓に持続感染し、尿細管間質性腎炎を引き起こすと考えられています。

 

 2012年に香港で発見されたウイルスです。日本国内でも感染猫は認められ、我々も日本国内で初めてウイルス分離に成功しています。

 

コアラレトロウイルスサブグループJ(KoRV-J)が分離されたコアラ。KoRV-Jはアメリカで飼育されているコアラでも同様のウイルスが発見されており、白血病やリンパ腫との関連が疑われています。(残念ながらこのコアラは、2008年11月に死亡しています。)